「ナマズって、食べられるんですか」
ヒレナマズの話をすると、ほとんどの方がまずこう言います。泥の中にいる魚、川魚、食べるものではない。そんなイメージをお持ちの方が多いと思います。
ところがいま、京都の居酒屋を中心に、ヒレナマズを刺身で出すお店が静かに増えています。白身でありながら弾力があり、噛むと甘みが出る。ナマズのイメージとはまったく違う魚です。
この記事では、ヒレナマズとはどんな魚なのか、なぜ刺身で食べられるのか、どんな味がして、どこで食べられるのかを、できるだけ正直にお伝えします。
この記事の要点
- ヒレナマズとは:アフリカ原産のナマズの仲間で、日本では屋内の養殖施設で育てられています
- 刺身で食べられる理由:外の水と切り離した完全閉鎖循環式の設備で育つため、寄生虫のリスクが低く、生食での提供が可能です
- 味の特徴:白身で弾力と甘みがあり、旨味成分のイノシン酸はマグロに匹敵する水準です
- 食べられる場所:現在は京都・東京・大阪の飲食店で提供されています
ヒレナマズとは、どんな魚か
ヒレナマズはアフリカ原産のナマズの仲間です。英語ではキャットフィッシュと呼ばれる魚の一種で、世界では広く食べられています。アメリカでは南部の定番食材ですし、東南アジアやアフリカでは日常的な魚です。
日本で食べる機会が少なかったのは、味の問題ではなく、流通していなかったからです。
ヒレナマズの大きな特徴は、空気呼吸に近いことができる点です。エラ呼吸だけでなく、水面から空気を取り込める器官を持っています。もともと水が少なくなる環境で生きてきた魚なので、酸素の少ない水でも耐えられます。この性質が、のちにお話しする養殖のしやすさにつながっています。
もうひとつの特徴が、成長の早さです。約半年で出荷できるサイズまで育ちます。多くの魚が1年半から2年かかることを考えると、かなり早い部類です。
なぜ今、ヒレナマズなのか
背景には、日本の魚をめぐる状況の変化があります。
水産庁の水産白書によると、日本の漁業・養殖業の生産量は1984年の1,282万トンをピークに減り続け、2023年は383万トン。ピーク時の約3割まで減りました。
獲れる魚の種類も変わってきています。海水温の上昇によって、これまで獲れていた場所で獲れなくなり、別の場所で獲れるようになる。伊勢海老は三重県で減り、北の海で獲れるようになりました。
困っているのは、実は飲食店です。毎日仕入れをしているお店ほど、この影響を直接受けます。今日は何が入るか分からない状態が続けば、献立も値段も組めません。
そこで注目されているのが、陸上養殖です。
陸の上に水槽を置き、水を循環させながら魚を育てる方法です。海や川から切り離されているので、天候にも漁の状況にも左右されません。2026年6月に閣議決定された令和7年度の水産白書でも、養殖業の今後の可能性として陸上養殖が取り上げられています。
ヒレナマズは、この陸上養殖と相性のいい魚です。半年で育つので電気代が抑えられ、酸素の少ない水に強いので設備のトラブルにも耐えます。
刺身で食べられる理由
ヒレナマズが刺身で提供できるのは、育ち方によります。
ヒレナマズを育てている完全閉鎖循環式(RAS)という方式では、外の水を使いません。水道水を使い、同じ水をろ過しながら循環させ、卵から成魚になるまで屋内の水槽で育てます。
川や海とつながっていないため、外から寄生虫が入ってくる経路がありません。これが、生食での提供が可能な理由です。
川魚は生で食べないというのが常識ですが、それは川の環境に由来するリスクがあるからです。その環境から切り離して育てれば、前提が変わります。
また、SAKANA DIRECTが扱っているヒレナマズは無投薬で育てられています。薬を使わずに育てられるのも、外部から病気が持ち込まれにくい閉鎖循環式だからこそです。
さらに、泥臭さもありません。泥のある場所で育っていないので、当然といえば当然です。
味はどうなのか
白身です。それも、かなりしっかりした白身です。
刺身にすると、見た目は淡いピンクがかった白。口に入れると弾力があり、噛むうちに甘みが出てきます。ふぐに近い食感だという方もいます。
味の裏付けとして、旨味成分であるイノシン酸が100gあたり約370mgという分析結果が出ています(北海道大学の研究機関による分析)。これはマグロに匹敵する水準です。
白身魚は一般にあっさりした味わいですが、ヒレナマズは白身でありながら旨味が強い。この組み合わせが、料理人から評価されている理由のひとつです。
ヒレナマズの成分(可食部100gあたり)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| エネルギー | 96 kcal |
| たんぱく質 | 18.1 g |
| 脂質 | 2.6 g |
| 炭水化物 | 0.1 g |
数値はそのまま載せています。何にいいかといった話は、きちんとした根拠がないかぎり書くべきではないと考えているので、ここでは事実だけをお伝えします。
どう食べるのが美味しいか
刺身
もっとも驚かれる食べ方です。ナマズを生で、というところで一度驚かれ、食べてもう一度驚かれます。わさび醤油でも、ポン酢でも合います。
蒲焼き
甘辛いタレとの相性がよく、身がふっくら仕上がります。
天ぷら・フライ
身がしっかりしているので、揚げても崩れません。衣との相性もよく、淡白すぎないので食べ飽きません。
鍋・しゃぶしゃぶ
薄く引いて湯にくぐらせると、弾力が際立ちます。
料理人の方からは、扱いやすい魚だという評価をいただくことが多いです。骨が少なく、身が取りやすく、加熱しても縮みにくい。厨房にとっては、味と同じくらい大事な要素です。
ウナギの代わり、なのか
ヒレナマズは、しばしばウナギの代わりとして紹介されます。蒲焼きにすると見た目が近いこと、ウナギの価格が上がっていることが理由です。
正直にお伝えすると、味でウナギに置き換わる魚だとは考えていません。ウナギにはウナギの美味しさがあり、それは脂と香りによるものです。ヒレナマズは脂が少なく、方向性が違います。
ヒレナマズの価値は、ウナギにはできないことができる点にあります。刺身で出せること。通年で同じ量が届くこと。価格が読めること。
代わりの魚ではなく、別の魚として見ていただけたらと思っています。
仕入れの視点で、ヒレナマズとウナギ味ナマズを比べた記事は「ウナギの代わりになる魚は? ヒレナマズ vs ウナギ味ナマズ 完全比較」にまとめています。
どこで食べられるのか
現在、京都・東京・大阪の飲食店で提供されています(2026年10月時点で7店舗)。
一政(京都・烏丸)
「津本式究極の血抜き」公認店。ヒレナマズを提供しています。魚の血を徹底的に抜き、熟成して魚の旨味を引き出します。
店舗情報:和ダイニング 一政 京都烏丸(ぐるなび)
獣肉酒場 米とサーカス(東京)
ジビエをはじめ、珍しい食材を扱うお店です。
店舗情報:米とサーカス 高田馬場店(食べログ)
ほか5店舗でも提供しています。取扱店は順次拡大中です。最新の情報はSAKANA DIRECTのサイトでご確認ください。
一般のご家庭向けの販売は、現在のところ行っていません。まずは飲食店で、プロの手で調理されたものを召し上がっていただくのがいちばんだと考えています。
京都・美山で、自分たちで育てはじめます
ここまでご紹介してきたヒレナマズは、岡山県の生産者が育てたものです。
そして2026年11月3日、私たちは京都府南丹市美山町に自社の養殖場を構え、ヒレナマズの稚魚を入れます。水産物の消費拡大を目的に水産庁が定める「いいさかなの日」(11月3日から7日)の初日に合わせました。
3メートルの水槽1基で、半年間に約400匹の出荷を見込んでいます。技術指導は、岡山で陸上養殖を手がけるジャパンマリンポニックスの内尾社長に受けています。
美山を選んだのには理由があります。ここは、若狭湾の魚を京の都へ運んだ、西の鯖街道の中継地です。かつて魚が通っていた道の途中で、今度は魚を育てる。そういう場所でやりたいと考えました。
私たちはもともと、養殖魚を飲食店へ直接つなぐ卸をしています。売る側にいた人間が、自分で育てる側にも回る。運ぶだけでは分からないことがあると思ったからです。
よくある質問
ナマズは本当に食べて大丈夫ですか
はい。世界では広く食べられている魚です。日本でも各地で養殖されています。ヒレナマズは屋内の管理された環境で育てられており、生食での提供も行われています。
泥臭くないですか
泥のない環境で育てられているため、泥臭さはありません。
骨は多いですか
少ないほうです。身が取りやすく、料理人の方からも扱いやすいという評価をいただいています。
冷凍ですか、生ですか
飲食店へは生の状態でお届けしています。
スーパーで買えますか
現在は飲食店向けの流通のみです。
まとめ
ヒレナマズは、ナマズという名前から想像されるものとはかなり違う魚です。
白身で弾力があり、旨味が強い。屋内の閉鎖循環式で無投薬で育つため、刺身で提供できる。半年で育つので、天候に左右されず通年で安定して届けられる。
海で獲れる魚が減っていくなかで、陸で育てる魚の役割は、これから少しずつ大きくなっていくはずです。
まずは一度、食べてみていただきたいと思っています。
ヒレナマズの仕入れをご検討の飲食店さまへ
卸値や納品方法については、お気軽にお問い合わせください。
SAKANA DIRECT/株式会社スリーグッド 代表 田中祐貴

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